リモート母さん ~破壊力はリモートを超えて~
コロナウィルスの影響で在宅勤務が始まって一月ほどたった頃のこと。
珍しく母から電話がかかってきた。
用事があっても無くても、娘に電話するのことが極端に少ない自立型というか自由気まぐれ型の母。
3カ月ほど全く連絡を取らないこともあった。
珍しいなと思って電話に出てみる。
「あら、出た」
電話の向こうで声がする。
私はお化けか?
まあ、このくらいはいつものこと。
何かご用か?と聞けば、
「私、今日からテレワークなの」
と母。
えぇ、私も今テレワーク中なんですけど。
「今日14時半からみんなで会議するのよ」
「はぁ」
「でね、会社のパソコン持って帰ってきたんだけど…」
あー、はいはい。
察しの良い方ならピント来るのではないでしょうか。
ちなみに母は60歳過ぎ。
はい、ピンポン♪パソコンがインターネットに繋がらないのです。
母よ、なぜに今?
テレワークって、「テレ」がなければただの「ワーク」ではないか。
というか、14時半から会議って、今すでに13時半ですけど。
午前中どうやってテレワークしてたのよ?
数々の疑問が湧くが、そこは抑えていろいろリモートで母に指示を出すが、全く日本語が通じない。
そりゃそうか。
通じない日本語のオンパレード。
しかし、パスワードくらいは分かっていて欲しい。
いつも一体どうやって仕事してるんだろう。ちょっぴり不安になる。
母の説明もすごい。
「うちはね、NTTからきて、そこからソフトバンクにいって、最後にこの黒いルーターって言うの?これにきてるらしいのよ」
NTTとソフトバンクはいつグループ会社になったのだろう?
たぶんプロバイダのことかなと思いつつも、全く意思の疎通はできない。
容赦なく私の時間を奪う母。
リモートなのに存在感は抜群だ。
どうしようかと思案していたところ、唐突に母が
「あ、会社から電話きたから切るねー」と一言。
電話は切れた。
嵐のようだよ、本当に。
後ほどLINEで(最近覚えたらしい)パソコンが繋がったとメッセージがきた。
良かったねと思いつつ、ハッとした。
テレワークってことは、テレビ会議するってことだよな。
あの散らかし放題の実家が映るのかぁ…
親父の股引きとか、天井の隅のクモの巣とか、孫のミニカーの山とか、業務に支障がないよう映らないといいなと願った。
今さらか。
リモート母さん恐るべし。